機能デバイス物理コース | エレクトロニクス | 河村研究室
光と電子が切り拓く次世代エレクトロニクス
今回の講師にはキオクシア岩手より梅木和博氏を迎え、半導体業界の構造、キオクシアが誇るフラッシュメモリの技術革新、世界経済やマクロ動向を踏まえた半導体の未来、そして若手人材に求められるマインドセットについて、解説がなされました。
キオクシアおよびフラッシュメモリ事業講義の中核として、キオクシアの企業理念、製造拠点、および主力製品である「フラッシュメモリ」の技術的優位性について深く掘り下げられました。
・キオクシア(旧・東芝メモリ)は1987年に世界で初めてNAND型フラッシュメモリを発明し、その後も世界をリードし続けています。「考える(CPU)」に対して「記憶する(メモリ)」領域を担っており、データセンターからスマートフォン、車載機器に至るまで世界中の電子機器を根底から支えています。・先進的な生産拠点として、岩手県北上市の「北上工場」(第1号棟・第2号棟など)は東北最大級の巨大半導体工場であり、世界最高水準の規模と生産能力を誇ります。さらに三重県の四日市工場と合わせ、国内での安定供給と最先端技術の量産体制を確立しています。・従業員の平均年齢が非常に若く(プロパー社員の平均年齢は約29.8歳)、新卒入社層が中心となって組織を牽引しています。製造現場は極めて高いレベルで自動化・AI化されており、「人がモノを作るのではなく、機械がモノを作る。人間はそれを高度に制御する」という最先端のスマート工場の姿が紹介されました。
半導体産業の歴史的変遷と経済分析 グローバルな半導体市場の動向と、日本経済・製造業が直面してきた歴史的背景について、経済学的な視点から講評が行われました。
1990年頃まで(バブル期) 日本経済が絶頂期を迎え、世界の半導体シェアの大部分を日本メーカーが席巻。 設備投資が活発化し、給与や雇用が右肩上がりに成長。
1990年代〜2020年頃 いわゆる「失われた30年」。円高の進行や海外(韓国・台湾・中国等)の猛烈な追い上げ。国内の製造業が空洞化し、賃金が長期間停滞。過度なコストカットや消極的経営に陥る企業が増加。
2020年以降~現在 AI、データセンター、EV、IoT等の爆発的普及により、半導体の重要性が再定義される。質の高い付加価値(高品質・高信頼性)を追求する企業や、大規模な設備投資を行う先端企業(ラピダスやTSMC等)が再評価される転換期。 特に、著名な経済学者の知見を引用し、「製造業で働く労働者数は減少しているにもかかわらず、製造業が生み出す付加価値は一貫して上昇している」という本質的なデータが示され、日本が生き残るための道筋が論じられました。
チャットGPT・生成AI時代の到来とフィジカルAI 現代の半導体市場を牽引する最大の原動力として、生成AI(ChatGPT等)の急激な普及と、それが実社会(フィジカル空間)のロボットやインフラに融合していく「フィジカルAI」の潮流が解説されました。 2022年末のChatGPT登場以降、AIの進化スピードは世界を大きく変えており、それを支えるデータセンター向けの大容量・高信頼フラッシュメモリの需要は今後も持続的な拡大が見込まれています。AIやロボットが自ら考え、行動する時代において、その頭脳と記憶を支えるインフラこそが半導体であり、半導体業界は今後も長期的な成長トレンドにあります。台湾のTSMCや米国の主要企業、そして国内での大規模投資が進む北海道(ラピダス等)の動向を踏まえ、日本の半導体産業が世界市場で再び勝負するための戦略的意義が強調されました。
学生に向けたキャリア形成のアドバイス 大学生活の早い段階から、世の中の動向を自らの頭で考え、データを読み解く力を養うことの重要性が説かれました。安易な安定志向や縮小均衡の企業ではなく、世界市場で持続的に成長し、高い付加価値を生み出す「成長企業・国際競争力のある企業」を見据えてキャリアを選択すべきであると力説されました。