【講義実施報告】第14回「秋田から考える東北半導体/エレクトロニクス」
2026年7月23日(木)、「秋田から考える東北半導体/エレクトロニクス」(第14回)が開催されました。今回は、液晶ディスプレイや車載用デバイス、さらに医療用X線センサの開発・製造を手がける Tianma Japan株式会社 より、開発本部 車載モジュール開発部 主任の伊藤克浩氏、ニュービジネス統括室 デバイス開発グループの関根裕之氏を特別講師としてお迎えしました。また、経営管理本部 人事総務部 人事労務マネージャーの曽田純平氏もお見えになり、将来のキャリアを見据える学生たちを温かく見守っていただきました。
当日は多くの学生が詰めかけ、グローバルなディスプレイ産業の最前線と、秋田工場から世界へ発信される最先端技術について熱心に聴き入りました。
- 会社紹介およびグローバル展開と秋田工場の役割(講師:伊藤 克浩 氏)
講義の前半では、親会社であるTianma Microelectronics(天馬微電子、本社:中国・深圳市、1983年設立)の概要が紹介されました。同社は中小規模ディスプレイモジュール市場で世界トップクラス(Top 3)のシェアを誇り、車載用ディスプレイおよびプロフェッショナル向けディスプレイモジュール、ヘッドアップディスプレイ(HUD)では世界シェア第1位(Top 1)を獲得するグローバルリーダーです。世界中に14の生産基地と9つの研究施設を展開しています。
その中において Tianma Japan株式会社 は、2003年にNECの液晶事業が会社分割されて発足した歴史を持ち、現在は川崎市に本社・R&Dセンターを置くほか、秋田市御所野に「秋田工場」を構えています。秋田工場は約450名が在籍する重要な生産基地であり、次世代ディスプレイや非ディスプレイ製品(タッチパネル・X線センサ等)の製造、資材調達、品質管理の拠点として機能しています。 - 液晶ディスプレイの基本原理と車載ディスプレイ技術(講師:伊藤 克浩 氏)
続いて、ディスプレイの基礎として、画素(ピクセル・サブピクセル)や光の三原色(RGB)の仕組み、および液晶ディスプレイ(LCD)と有機EL(OLED)の構造的な違いが解説されました。LCDは、バックライト(光を作る)、液晶分子と偏光板(光量を調節する)、カラーフィルター(色を作る)が分離した構造を持ち、各サブピクセルに配置された半導体スイッチ「TFT(薄膜トランジスタ)」が高速に光のシャッターを開閉することで多彩な映像表現を実現しています。
さらに、近年のスマートモビリティの進化に伴う 車載ディスプレイのトレンドについての説明がありました。自動車の使用環境は、高温・低温、高湿度、紫外線、タッチ操作時の摩擦、ノイズなど極めて厳しく、車載用ディスプレイには「10年耐久」をはじめとする高い信頼性が求められます。また、安全運転を支えるデバイスとしての開発が進んでおり、以下の先進的なコンセプトが紹介されました。
• 前方不注意防止: 前方を確認する視線と車両情報を確認する視線のズレを減らすため、ダッシュボード奥に高輝度ワイド液晶を配置してフロントガラスに投影する「Window Shield Display」や、透明クラスターの開発。
• 操作性とインテリア性の両立: ディスプレイ表面に回転式ノブを接着し、物理的な直感操作と柔軟な画面設定を両立させた「Knob on Display」や、内装と同じ模様のフィルムを貼ることで非使用時は存在を隠す「Seamless Display」。
• 次世代技術: 50μm以下の極小LEDを用い、背景を透過させながら映像を表示する「マイクロLED」ディスプレイなど、未来のコクピット空間を創出する技術が紹介されました。 - 医療・産業を支えるX線センサ技術(講師:関根 裕之 氏)
後半では、NECのディスプレイ研究所出身であり、現在はニュービジネス統括室でデバイス開発を担当する関根裕之氏より、秋田工場で製造されている X線センサ について解説が行われました。 X線も可視光と同じ電磁波の一種ですが、波長が極めて短く(1nm未満)高エネルギーを持つため物質を容易に透過します。NECの液晶工場であった秋田工場の基盤技術をどのようにX線センサに応用しているのか、可視光センサとの比較を交えて説明がなされました。特に、高エネルギーのX線を照射する際に課題となるIGZO TFTの「X線耐性(正電荷の蓄積による特性変動・閾値電圧シフト)」に対し、ゲート絶縁膜を3層構造にするなどの独自の高耐性化技術の開発プロセスが紹介され、工学を学ぶ学生たちにとって極めて実践的で示唆に富む内容となりました。
最先端の車載HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)のデザイン性・安全性追求から、秋田の地で脈々と受け継がれる半導体デバイス・回路技術のモノづくりまで、多角的に学ぶことができた今回の講義。受講した学生たちは、地域に根ざしたグローバル企業が世界市場をいかにリードしているかを実感し、将来のエンジニアとしてのキャリアを考える上で大きな刺激を受ける一日となりました。









